日時 2009年9月28日(月)15時から17時
場所 六本木ヒルズクラブ・ラ クッチーニ(個室)
経営戦略としてのワーク・ライフバランス
【講師】小室淑恵氏 ((株)ワーク・ライフバランス 代表取締役)
小室:まず専門家の方々が多い中、基本的なお話になりますが、初めての方もおられるといけませんので、はじめの1時間はレジメに沿ってお話させていただき、後半は質問やディスカッションの時間とさせていただきたいと思います。
日本は、一言でいうと「ワーク・ワーク・ワーク」の国です。現在の日本は、60時間以上の残業をしている人の割合が世界トップです。しかし、どれだけ高い付加価値の仕事をしているかをはかる労働生産性では先進国で最下位の20 位という現状があります。つまり、仕事ばかりの生活になったことで、アイディア・人脈・スキルなどを身につける時間がなくなっている私たちは、高い付加価値を求められる仕事において、むしろ成果を出しづらい状況にあるのです。
ここから抜け出し、「ワーク」において高い付加価値を提供し、成果を上げるためにも、広い視野や人脈を得ることの出来るような「ライフ」が必要なのです。つまり、双方をうまく調和させ、相乗効果を及ぼし合う好循環を生み出そう、というのがワーク・ライフバランス本来の目的です。
今多くの企業が抱える課題は、女性を採用育成できないこと、休業時短を経て継続就業できないこと、長時間残業が恒常化していくこと、マネージメントの意識が変わらないことが挙げられます。こうした課題をそのままにしておくと、多様な価値観が育たず、グローバルなマーケットにおいて勝っていけないことになります。WLBを実施しない企業はビジネスで負けるということなのです。
では、このワーク・ライフバランスという考え方を積極的に進めるために、どのような取り組みをすることが必要なのでしょうか。時折「ワーク・ライフバランスは女性や子どもを持つ人だけに関係のあることだ」という誤解を聞くことがありますが、将来その恩恵を受けるのは、今まさに働き盛りの男性であるといわれています。
「もうひとつの2007年問題」をご存じでしょうか。「もうひとつの2007年問題」とは、2007年に一斉退職した団塊の世代が、あと15年すると一気に要介護年齢に入り、介護施設の数が間に合わず介護難民が大量に生まれることを指します。彼らの介護をするのは今、企業の中核を担っている団塊ジュニアです。つまり、15年後には一斉に介護休業やデイケアセンターの送り迎えによる短時間勤務など大きく働き方が変わることになるのです。団塊ジュニアは兄弟が少ないですから、介護に当たる率は非常に高く、また男性の未婚率も高いので、自分ひとりで介護に直面する人も多くなります。そうなると、育児で休む女性よりもむしろ男性の休業者のほうが多いという時代が来るのです。
今後求められるマネージメントとは、個人のモティベーションを落とさせないことが第一です。成果を最大にするためにできることを考えることです。
それを仕組み化していく企業が勝ちます。またその間の独身女性の不公平感をくみ取り、全ての日とが対象とされている取り組みだということを周知徹底することです。時間や仕事場所を柔軟にするなど柔軟な配慮も重要です。しかし最も重要なことは、自分自身がWLBを実践し自己研鑽に励む姿を見せることです。
ワークとライフの好循環が生まれると相乗効果で結果的にワークの質と効率が高まって正の好循環が生まれていきます。これをワークライフハーモニーと呼んでいます。
質疑応答
木全:どういう企業が、どういう問題意識の中でアプローチされてくるのでしょうか。
小室:3年前には育児制度を充実したいという相談が多かったが、2年前からメンタル面の問題からゆとりある職場を作りたいという相談が増えてきました。リーマンショック以降は残業を減らしたいという企業が多いですね。
コンサルティングでは、8ヶ月から12ヶ月の間トライアルのプロジェクトチームを5からチーム作ります。そのうち3つはWLBが悪いチームで構成し、残りの5つはWLBを進めたいチームにします。チームで仕事の問題点を洗い出し、2回に分けて報告会を行います。
最初の報告会、(人事執行役員やグループ関連会社社長レベルへの報告)までは無駄取りに過ぎない動きだが、最後の報告会、社長以下トップ層に向けての後半の動きは、本当に深めた成果を出すための時間になります。
北里:WLBは経営戦略となってきたと伺いました。英国では企業のWLB推進を投資レイティングに反映するなど、経済的メリットも確立しています。政官財が一体となってWLBに取り組んでいますが、日本も次のステップに挙げるにはどうしたらいいだろうか。
白河:専業主婦志向だった小室さんが猪口先生の話をきいて開眼したとうかがいました。私は今の若い女性たちがいまだに専業主婦志向で家計を担うのは夫と考えているのを変えていかないといけないと思っています。
小室:当時どんなに勉強ができても、周りは女性らしい人を求めていると感じていました。働くのであれば男性化しないといけないというメッセージを受け取っていました。まるで先が閉じてるトンネルを走れと言われているようでした。そこで私は「負け戦」にでないため、防衛本能から「わたしは働きたくない」というスタンスを周知徹底していました。猪口さんの話では、共働き家庭が増え、企業は働いて子育てする女性たちのアイディアを入れていかないといけなくなる。これからは子育て女性が求められるんだと言われました。差別撤廃ではなく、求められる、これはビジネスチャンスになると感じました。
堀井:ワークライフバランスのライフとは、私は人生であると考えています。
ライフワークとして何がしたいかという視点はありますか。
小室:個人向けのセミナーでは仕事・家庭・地域の3本の柱で支えられた人生を、と話しています。仕事一本の柱だと仕事で否定されたら、全否定になり、すごく恨んだりします。私もそうでした。一本しか柱がないとこれを押したり引いたりして壊してしまうのです。メンタルな問題が出てきます。
ほかの柱が支えていると自分を待っている人がいることが張り合いになります。仕事がうまく行かないとき、ボランティアで学生にプレゼンを教えているとふっと方の力が抜けて仕事がうまくいったということがあります。できればもっとたくさんの柱があればいいですね。
木全:日本人として、アジアの一員として、世界の一員として、と言う柱も大切だと思いますね。
佐々木(常):日本の企業はWLBに対してどのくらいのスピードで変わろうとしているのでしょうか。少子高齢化は日本人の一人ひとりが物理的に選択したことです。起こるべくして起こっています。リーマンショック以降、東レでは残業ゼロを目指し強制的に残業をさせない方式にしました。残業代が出ない場合に残業をする人はいません。このようにいまや製造業では残業はほとんどゼロになっています。その後はどうなるのか。戦後ずっと続いてきた就労観は変わるのかどうかについてご意見を伺いたい。
小室:時間ができても有効に使える人と使えない人がいます。空いた時間をただのみに行くのにだけ使っている人もいます。多くの若い人は学びに使っています。
私は家族のあり方という流れがおきないといけないと考えています。日本全体で家庭か変わることも大切だというメッセージを出していくことが必要でしょう。
佐々木(常):長時間労働が評価することはありません。どんなに無能な上司でも部下の評価はできると思います。
小室:長時間労働の人を評価するのではなく、時間的制約のないほうが使いやすいから、と評価する傾向があるということです。
清水(朋):お話を聞いて、大企業が変わり始めている感じがします。中小企業ではどうでしょうか。
小室:中小企業の方働き方の柔軟性という面では進んでいます。もっとWLB化させていくためには、自治体の助成金という支援策ではなく、ビジネスを推進していくために必要な取り組みとしていくことが必要です。
大沢:週3回などの働き方を導入している企業はありますか。これが女性を使う鍵になると思います。
小室:できる企業は増えてきていると思います。 |