日時 2011年1月24日(月)15:00から17:00
場所 オルタナサロン
バイオダイバーシティ、生物多様性とは
【講師】足立直樹 (株)レスポンスアビリティ 代表取締役
足立:昨年COP10が開催され、日本でも生物多様性と地球環境の持続可能性についてずいぶん関心が高まった。しかし取り組みはまだまだである。私はマレーシアの熱帯雨林で生態学の研究者をしていたが、研究者の世界では、研究のための研究になっており、せっかくの成果が実社会に生かされていないことを痛感した。理学系の研究者の立場から実社会に発言する必要性を感じ、2002年に国立環境研究所を辞めて独立し、2006年には会社をおこし、生物多様性とCSRに関するコンサルティングを行っている。人間は生物であり、生き物のバランスの中で生きている。今もっとも関心があるのは、持続可能性についてであり、生きもの世界の知恵をこれにどう活かすかである。
熱帯雨林にはさまざまな樹がある。緑の色も、木の形もそれぞれ異なる。この写真を見ていただきたいが、この一枚の写真のなかに少なくとも200縲鰀300種類の木々が映っているだろう。日本の天然林では、たとえばブナの森であれば、そのかなりの部分はブナの木で成り立っている。それに較べて、熱帯雨林は実に多様な種で構成されており、生物多様性の宝庫といわれている。
このショウガの仲間の写真をみてほしい。葉をらせん状に広げて成長している。お互いの葉が互いに重ならず、光を効率よく受光する構造をしている。この植物は林床、つまり森の下の部分に生えているので、太陽の光の3%くらいしか届かない。この葉の配列のお蔭で、この植物が光を受ける効率は、理論上の最大値に近いだろう。このように生物は様々な知恵をもっている。限られた資源をどう配分するか、どのように生産性を上げるかを考えているかのようであり、これはビジネスとまっく同じだ。
この写真は、世界でもっとも大きいと言われるラフレシアの花である。この植物は、葉をもたない。ではどうやってエネルギーを得ているのかというと、つる性の植物に寄生をしてエネルギーをもらって生きている。葉もないので普段は森の中でほとんど目立つこともないが、ある日突然花を咲かせ、わずか4,5日間開花する間に受粉して、次世代に遺伝子を伝えている。森の中にポツン、ポツンとしかなく、ほんのわずかな期間しか花を咲かせないのに、どうやって受粉するのだろうか。実はハエに手伝ってもらっているのだ。開花するとちょっと臭いにおいをだし、ハエをおびき寄せ、ハエに授粉を助けてもらっているのだ。このように、熱帯雨林の中では、生き物同士がお互いに依存して生きるしくみもたくさん見ることができる。
私が参加していた研究プロジェクトが調べていた熱帯雨林では、50ヘクタールのなかに814種もの木があった。草や昆虫はどれだけの種類になるか、さだかではない。数が一番多いのはシロアリで、哺乳類ではサルやイノシシが多く、鳥も実にたくさんの種類がある。一つの森の中に、何万種という生き物が生きている。
ところがこうした多様な生物を擁する森が、人間によって切り開かれている。木材のために切られることもあるが、いまマレーシアなどで問題になているのは、パームオイルのプランテーションを開発するための森林伐採だ。
熱帯林を伐採し、パームオイルをとるために西アフリカ原産のパームオイルを人間が植えているのだ。このヤシから採れるパームオイルは、世界中でもっとも多く使われている食用油だ。他の植物油に比べて価格が安いので、チョコレートやクッキーなどのお菓子の原料に使われているほか、外食産業でもよく使われている。この森林伐採により、何千種、何万種類の生き物が生きる場所を失い、絶滅の淵に追いやられている。もちろん自然災害などが原因で生物が絶滅することもあるが、割合からみるとほんの少しでしかない。いま生物が絶滅する原因の99.9%以上が、人間活動によるものと言われている。
地球上には、推定で3千万種から5千万種の生物がいると言われている。そのうち既知の生物は約190万種にすぎない。つまり、わたしたちは同じ地球に住む仲間のうち、まだ1割以下しか知らないのである。ある人は、現代の状況を次のように表現した。「わたしたちはそこにどういったデータが含まれているかを知らずに、ハードディスクドライブを消去している」と。
なぜこんなに多様な生物が存在するのか。
それは、多様な遺伝子が存在するからである。すべての生き物の遺伝やDNAの仕組みは共通である。そのため、地球上に存在するすべての生物の祖先は同じであったと考えられる。それから生物は、38億年を少しづつ進化してきた。生物は世代を交代する過程で、わざとDNAをほんの少し変えてバリエーションをつくっている。例えば、子どもは両親に似ているが同じではない。兄弟も似ているけれど、微妙なところで少しづつ違う。自分とまったく同じコピーを作るのではなく、わざと少しずつ違える、つまり多様性を作り出しているのだ。
生物多様性は38億年の地球の歴史の結果である。
生命の目的は、常に最大限に繁栄することではなく、最悪の場合でも誰かひとりが生き延びてくれることにある。皆が同じ仕組みを持っていると病気や災害などで絶滅する恐れがある。みんなが同じでは生命体としてとても弱い。ある状況下では強さを発揮するかもしれないが、状況が変わるとぼろぼろになってしまう。そうしたことがないように、生命は38億年かけてあえて多様になってきたのである。だから、38億年の歴史の結果というべき多様な生物種の存在が途絶える、絶滅するということは、とても重いことなのである。
なぜ生物多様性を大切にしないといけないのか
38億年かけて進化してきた生物が、いま絶滅の危機に瀕してきている。今や哺乳類の22%が、両生類の4割が、そして植物では4分の1が絶滅が危惧される状態にある。森林破壊などで生物が住む場所が失われてしまったことが最大の原因である。今なお毎年1300haの熱帯林が消滅している。また1980年以降サンゴ礁の30%がなくなり、このままでは2050年には地球上からサンゴ礁が消滅するとすらいわれている。
もちろんこれまでも生物の絶滅は起きている。今の問題は、生物が絶滅にいたる速度が速くなっていることだ。恐竜が死滅した時期に比べても100倍以上の速さで絶滅にむかっている。過去の化石を見てみると、絶滅期と呼ばれる時期ですら絶滅速度は年間で100種程度だったが、今では1日に100種の生物が絶滅している。
2006年のサイエンス誌に掲載された論文は「このままでは40年以内に世界の海から魚がいなくなる」と警告しており、世界に衝撃を与えた。魚の8割はすで獲りすぎで、人類はこの50年間で大型魚類の90%をとりつくしてしまったと言われている。タイセイヨウクロマグロは、ここ10年でその数が3分の1に減少したことからクローズアップされるようになった。しかし、このままではクロマグロに限らず、他の魚も同様の運命をたどるようになるだろう。
危機を解決するには
地球はどういうエネルギーで動いているのだろうか。
もともと地球に存在するエネルギーは、太陽からの放射エネルギー、地球創生期の集積エネルギー、地球内部にある放射性エネルギーである。現代社会は95%を化石エネルギーでまかなっている。これは過去に地球に降り注いだ太陽エネルギーを植物が固定してできたものだ。人類は大量の化石エネルギーを消費し、それが地球環境問題の原因となっているわけだが、実は太陽エネルギーは莫大である。地表に届いているエネルギーだけでも、私たちが消費する化石エネルギーの1万倍もある。
その巨大な太陽エネルギーを利用して、有機物を生産をしているのが、植物だ。熱帯雨林や植物プランクトンの豊富な海は特に生産量が多い。小さなプランクトンなど取るに足らないと思うかもしれないが、木の数が2倍になるのに何十年もかかるが、プランクトンであれば最短で30分もあれば倍に増えることができるのだ。
植物は地球のエネルギー工場である
このように植物は太陽のエネルギーを光合成で固定するが、これは光のエネルギーを化学エネルギーに変えることだと言える。
普通、光合成は二酸化炭素を吸収して酸素を作ることだと理解されているだろう。そしてその際に糖が作られる。これが動物のエネルギー源となる。私たちはその糖を体内で燃やして、二酸化炭素と熱を出し、その熱で体を動かしているのだ。つまり、人間を含めた動物は、植物が光合成で固定した太陽エネルギーによって生きているのだ。
食物連鎖と食物網
自然界では、太陽エネルギーが源となった循環のなかで、すべてのものがつくられ、すべてのものが循環している。例えば、生産者である植物を一次消費者の虫が食べ、それを二次消費者のカエルが食べ、高次消費者の鳥が食べ、分解者である微生物がこれらの排泄物や遺体を分解する。
しかし、現実はもう少し複雑だ。生産者である草を一次消費者である鳥やリスが食べ、それを高次消費者のオオカミやキツネが食べる。しかし、ここで重要なことは、キツネはリスだけでなくウサギや小鳥も食べることができるということだ。なにか一つがいなくなっても生き延びられるように、食べ物の細かい網の目が張り巡らされているのである。この重複性をもつことで、生物はお互いに支え合っている。これが生物種が多様であることの意味と言っていいだろう。ある生き物がいなくなるということは、この網の目がブツブツと切れてしまうということだ。どこまで切れても大丈夫なのかはわからない。あるところまでは大丈夫でも、次の瞬間、全体のバランスが突然崩れてしまうかもしれない。だからこそ、生物多様性を健全なまま保全することが重要なのである。
食物網はピラミッドのような構造になり、よく生態系ピラミッドと呼ばれる。生産者は一次消費者の約10倍の数が必要であり、一次消費者もまた、二次消費者の10倍程度が必要となる。ところが、この生態系ピラミッドのトップにいて何でも食べてしまう人間の数は、むしろ他の生物に較べて多過ぎるのだ。森が消えることは生産者が減ることで、同時にそれを糧として生きてきた消費者の数も減る。その結果、今や生態系ピラミッドが傾きつつある。
私たち人間は自然から何を学べるのか
このように、人間は今や自然の本来の仕組みとはあまりにかけ離れた存在になってしまっており、その結果、様々な環境問題に直面している。逆に、私たち人間は、自然の仕組みから何を学べるだろうか。自然界で働いている法則として、いくつか重要なものをピックアップしてみよう。
自然の法則
1. 地球は閉鎖系で、資源は有限である。
その天井にぶつかって人間は困っているが、自然は38億年間、この中でうまくやってきた。
2. 自然は物質を循環させる。自然に、ごみは存在しない。
自然はみずから分解できないものはつくらない。ごみは存在せず、排出されたものは分解され、他の生物の役に立つ。
3. 太陽エネルギーが自然界を循環させ、生命を生かしている。
既に説明したように、太陽エネルギーこそが、自然を動かす原動力である。
4. 自然は急がない。自然は、自然界が供給する以上の速さで物質やエネルギーを使わない。
ところが、人間は自然が何万年もかかって貯めてきたエネルギー、化石エネルギーを一気に使ってしまっている。
5. 自然は相互に関係性をもち、その複雑な支えあいで成り立つ。
ラフレシアの例もそうだし、また食う、食われるの関係もそうだ。どちらかに問題が起きれば、お互いが困ってしまう。
6. 何か働きかければ、反作用がおこる。
他にまったく影響を与えないということはあり得ない。
7. 自然は多様性を好む。多様性は可能性の源泉である。
多様であるが故に、そこから様々な可能性が生まれてくる。
8. 自然には階層性と冗長性がある。これらが強さの源泉である。
9. 自然はバランスの上に成り立っている。
10. 自然は公平である。特権階級もオールマイティな存在もない。
誰にも同様に課された有限性の中で、使える資源をどう配分するかというやり方だけが違う。
11. 自然は壊れても自分で修復する。
12. すべてのものには寿命がある。個体は有限だが情報や仕組みは変化(=進化)しながら伝え続けられる。
自然から学ぶこと
こうした自然の法則から、私たちは何を学ぶことができるのだろうか。私たちの社会や生活、産業のあり方を、自然の法則に倣うことでもっと良いものにできないだろうか。そう考えたとき、私は以下の3つがキーワードになるのではないかと考えている。
人間は文明を発展させ、自然とは別に勝手に生き出した。しかし、地球の有限性にぶつかった今、勝手なやり方は通用しなくなっている。やり方を見直さないといけない時期にきているのではないだろうか。
生物多様性ということ
最後にもう一つ、最近よく聞かれるようになった「生物多様性」という言葉、考えかたについても触れたい。生物多様性と言ってもなんだかピンと来ないと思うので、私たちの身近なところにある生物多様性が役立っている例をまずいくつか挙げたい。
八角、スターアニスという植物がある。中華料理の調味料として有名だが、実はそれだけではなく、最近ではインフルエンザ治療薬タミフルの原料として使われている。多様な生物の中には、私たちの生活や産業に役立つ多様な可能性があると言っていいだろう。
もう一つ別の例を挙げたい。私たちは毎日大量の紙を使っている。世界全体では毎年4億トンの紙を消費しているそうだ(2007年)。これだけの紙を作るために、私たちは最低でも3800万haの森林を必要としている。これは日本の国土面積とほぼ同じ、広大な面積である。しかし、森林はきちんと管理すれば、これからも継続的に利用することができ、紙も継続的に作り続けることができる。これは生物資源の素晴らしい特性と言っていいだろう。
また、私たちは奇麗な水や空気を利用しているが、これを誰が供給してくれるのであろうか。それは、森や湿地、海などの生態系である。これらが水や空気を浄化し、循環させることで、水や空気の供給がなりたっているのである。
このように生物多様性は、私たちが生きるために必要な「生態系サービス」を提供してくれるし、だからこそ人間や産業にとっても重要であると言える。すべての人間は生物多様性なしに生きられないだけでなく、すべての企業も生物多様性なしには存続し得ない。ところがこのように私たちの生活や産業が依存している生態系サービスは、20世紀後半の50年の間にすでに非常に劣化してしまっている。
生態系サービスの経済価値を試算した研究がある。海洋は21兆ドル、森林は4.7兆ドルなどで、合計すると少なくも約33兆ドルと見積もられた。これはこの研究が発表された1997年の世界のGDP18兆ドルの倍近い金額である。
生物多様性が失われると、このような莫大な価値を持つ生態系サービスも使えなくなってしまう。こうしたとこから、今ではグローバル企業のCEOの27%が「生物多様性はビジネスリスクである」と考えるようになっている。例えば、熱帯雨林を焼き払ってパームオイルのプランテーションを開発したことが発覚したある会社は、IFC(国際金融公社)から半年間融資がストップされてしまったという例がある。またロシアのサハリン2プロジェクトでは、コククジラの生息地を回避するようにロシア政府からプロジェクトの改善命令があり、それに従うために開発予算が当初の計画の2倍の2兆円に増えた。逆に生態系サービスを利用することで、費用を削減することも可能である。ニューヨーク市はダムを造るより天然の水質浄化機能に投資した方が得であると判断し、ダム建設をとりやめた。このように、生物多様性に配慮してビジネスを行わないと、リスクが高くなってきているのである。
昨年愛知で開催されたCOP10で決議されたことのひとつに2020年目標(愛知ターゲット)があるが、その中では、持続可能な生産と消費という項目がある。生物多様性条約にはアメリカを除く193の国と地域が加盟している。持続可能性はこれから、企業にとって具体的な行動目標になるだろう。
持続可能なビジネスへのシフト
基調な生態系を破壊するような開発しないということはすでに常識である。これから目標になるのは、生物多様性を生かしたビジネスをすることである。20世紀、私たちは石油のおかげで豊かになった。しかし、サウジアラビアのヤマニ元石油相は、「石器時代が終わったのは石がなくなったからではない。石油が枯れるより以前に石油の時代は終わるだろう」言い、今、中東の国々は脱石油に向かっている走り出している。
これからは、生物資源を上手に使うことが求められている。単に資源を使うだけでなく、生物を真似することも役立つだろう。例えば、カワセミのくちばしの形をまねて、新幹線の空気抵抗の小さいノーズの形ができた。蜘蛛の糸は、ナイロンの2倍の伸縮度で、鋼鉄の5倍の強度を持つ。モルフォ蝶は光を反射させる構造色をもつ。この構造を真似て、染料、つまり化学物質を使わないで美しい色を出す布がつくられている。
最後に
自然は38億年かけて自らを変化させてきた。行き過ぎたものは戻り、壊れれば、またバランスのとれたシステムがつくられてきた。破られたバランスは必ず元に戻るのである。
* * * *
質疑応答
北里:COP10では、途上国で発見された資源をつかったビジネスに対する利益のシェアについて議論がなされていたようだが。
足立:途上国は多くの生物資源をもっている。一方、それを利用して薬にする技術をもつのは先進国だ。今回、名古屋議定書が出来たことで、先進国の企業が稼いだ利益の何%かを原産国に戻すという契約をすることになった。国はそれを監視する義務を負う。
堀井:先進国はいままで恩恵を受けてきている。アフリカ、インドなどの途上国も同じ発展をしようとしている。我々がおさえても、中国、インド、アフリカの発展が急激におこれば大きな矛盾が生じ、地球規模ではお手上げのような懸念があるが。
足立:キャッチアップ効果というものがある。後から来た人たちは、最先端の技術から学べるということだ。いまアフリカの村の人たちは携帯電話をもっている。固定電話のようなインフラが必要なく、負荷がかからない発展の仕方がある。
ただ、すべてのものが同じようにいくわけではない。例えば、自動車だ。中国に行くたびに車が増えている。おカネができると、自由に好きなところに移動できる自動車がほしいと考えるのは当然のこと。これを市場に任せておくだけというのでは、持続可能性はありえない。地球は有限であるので、ある程度の強制力を持って解決しないといけない。
途上国は、先進国の教訓に学びながら、自分たちにとってもメリットがあることを知ること。先進国は、より効率のいいスマートな方法に移るべきだ。
木全:先進国の方が途上国よりもっと何倍も努力しないといけない。日本に欠けているのは地球や世界全体をみる視点だ。また、日本は環境技術に関しては進んでいるので、その点だけが強調されるので、大人はもとより、子どもたちもが環境破壊に大きく加担している日本人の生き方を考える前に「日本は環境先進国」だと思ってしまう。また、いま中国が怖いのは、日本やアフリカの土地を買い進めているということ。環境破壊に対する認識がないままに進めていくのではないかとの危惧を禁じえない。
足立:中国の政治家はよく考えている。例えば太陽光発電をとっても、中国の技術は細かな点ではまだ日本には及ばない。しかし少々未熟な技術であっても、大量の建物に普及させており、また価格も安い。多少荒削りでも、世界全体からみると中国のほうがはるかに進んでいると言える。GDPでくらべても、日本は世界第3位ということしか知らない。国民一人当たりのGDPではもはや世界20位にすぎないし、生産性も高くないことを知らない。日本の企業は世界を見ていない。
北里:日本の経済界の関心は経済性だけだ。先進国の人々は欲望を抑えないといけない。日本古来の神社や神道は自然を大切にして、自然と共存している。こうした智恵を生かせないかなと思う。生物多様性を守るバイオエナジーの高次レベルの活用についてはどんなことが考えられるか。
足立:人間が世界の一次生産(光合成)の10分の1と同等のエネルギーを使っている現状は多すぎだ。省エネをするのは基本的なこと。風力やバイオマス等もあるが、捨てられた木の利用など、一部分だけ使ったものの残りをどううまく使うかを考えることも必要だ。陸地面積は限られているので、バイオマスとしてプランクトンの可能性は大きい。海を使うことができ、油をつくるためにつかうこともできる。
? 3000万種から4000万種の生物種が絶滅したとして、人間生活にどのような影響やリスクがあるのか。また人間が絶滅してしまえばどうなるのか。
足立:生態系の網の目は複雑につながりあっているので、どの種が絶滅したときにどうなるのかはわからない。ただ、人間が絶滅しても地球全体にとっては何の問題もないだろう。しかし、私たちにとっては人間あっての地球という視点であり、人間がいなくなることを前提にしてもしかたないだろう。
現実的には人口爆発の問題の方が課題だ。今年地球上の人口は70億人になる。人口爆発を防ぐためには、教育が重要なカギとなる。教育に熱心になれば明らかに子どもの数は減る。例えば多民族国家のマレーシアでも、マレー系は多産だが、中国系では子どもは2人程度までの場合が多く、一人ひとりの子どもに高い教育を受けさせる。その結果、高所得を稼ぐようになる。当然また、その子どもの教育には熱心になるだろう。
堀井:氷河期は太陽エネルギーとどう関連するのか。地球温暖化の問題からみると今は氷河期にむかっているのか。
足立:氷河期の前後では、数万年かかって気温が1度変化するという程度の変化であった。いまでは100年間に1度気温があがっている。100倍ものスピードで変化していることが問題だ。
いまアメリカでは気候を人為的にコントロールしようとする動きがある。日本は黙認するスタンスだ。それに対して、研究者たちは批判の声を挙げている。
北里:このような環境問題は学校教育では語られているのか。
足立:個別の課題としては取り上げられているが、なかなか総合的な理解につながっていないのではないだろうか。省庁の中では環境省が担当だが、動植物の保護が中心で、社会全体の動きの中での位置づけや企業としての視点などはまったくない。ほとんど考えられていないのが現状である。
堀井:コンサルティングではどういう行動をアドバイスされているのか。また中小企業には?
足立:メーカーを例にとると、工場やその周囲の生態系に配慮することなどから入る企業もある。また原料がどこからきているのかを確認し、生態系に配慮した原料を使用することを進めることなどを行っている。
中小企業も、地域に根差した企業はむしろ周囲の生態系に配慮することができる。最近では、大企業の原材料調達網に入っている中小企業も多い。大企業が部品を納入するサプライヤー企業にも配慮を求めだしている。中小企業だからといって無縁ではいられないだろう。
例えば、世界中で紅茶を販売しているユニリバーという巨大グローバル企業は、2015年までに生産現場で生態系に配慮した茶葉しか扱わないと決定した。その結果、ユニリーバ傘下のリプトンの紅茶は、生態系に配慮したものに変わりつつある。このように、巨大なグローバル企業は問題に気付いて動きだしている。
木全:ザ・ボディショップが提唱し、実行していったことはまさにそのこと。800の種族の知恵を原料に徹底的に地球(自然)との共存を基本に、全ての側面で取り組み、社員、お客様、Communityの人々と考え、行動を・・・と社会変革活動を展開していった。
地球環境の問題は、人類が自然と共存していくための闘いであり、協働して、いかにいきていくかという問題である。 |