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ワークライフバランス研究会

第3回 JKSK拡大ワークライフバランス研究会 

日時  2008年5月26日(月)15時から17時
場所  パレスホテル IVYハウス(B2)

ヨーロッパ諸国のWLB関連施策の展開とWLB先進企業500社の取り組み
~日本のWLB関連施策および日本企業の現状の批判的検討~
【 講師 】渥美由喜氏(株式会社富士通総研 主任研究員) 

WLB研究のきっかけは「自分の生存権確保
私は現在40歳であり、共働きの妻と1歳の息子がいます。男性の中には、「男がなぜ女性を守るための研究などするのか」という方もいらっしゃいますが、私は、ワークライフバランスは自分の生存権を確保するためでもあると思っています。
以前2000人規模のシンクタンクに務め始めた頃、「部内会議 午前2時から」という案内を見て驚きました。ワークライフバランスの非常に悪い職場環境でした。私は自分が父親になる前の24歳の頃から15年間、週末に子ども会のボランティア(紙芝居の読み聞かせや鬼ごっこなど)をしており、それが生きがいです。子ども会に入った動機は、地域の子どもがおかしくなっているということ、会社に女性がいないのが問題であるのと同様に地域社会に働き盛りの男性が不在であることを問題に感じたからです。しかしそれを同僚に告げると、「お前はバカか。金にもならないことを。週末はいつ会社によびだされてもいいように“待機”する時間、またはハードワークに備えて身体を“休める”時間だ。時間の使い方を間違っている。」といわれ、これはおかしいと。
その後200人強の規模の中小企業、富士通総研へ転職。「働きやすさ」がやる気を出し成果も上がるということを身をもって痛感しました。
今後は働き手が企業を選別する時代へ。経営戦略として働きやすい職場作りが重要になってきています。「働きやすさ」の追求を、“誰でも”という軸で考えるのがダイバーシティ、“いつでも”(24時間、または各ライフステージという意味で)“どこでも”という軸で考えるのがワークライフバランスということになります。

研究はデータに頼らず、自らヒアリング
私はマクロ研究は好きではありません。働きやすい企業は「空気」が違う。制度があるだけで実際はギスギスしている職場もありますが、働き甲斐のある企業は実際にその場に身を置いてみてわかることです。国内の先進企業400社、海外100社のヒアリングを実施しました。子どもが生まれる前は「職場体験」を海外でも行いました。海外企業は、スウェーデン、フィンランド、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカなど。
文献になっているものは、既に最新の情報ではないと思いますね。最先端の知恵は現場に転がっているものです。特に中小企業をまわると、本人たちにとって当たり前と思っているようなことが、実は日本で数社、世界でも数社しかやっていない宝の知恵、ということがよくあります。 研究成果を、実際の企業や自治体へのアドバイスとして活用しています。

WLB&ダイバーシティは、仕事と家庭と地域
ワークライフバランスは、仕事か家庭生活かという二者択一ではありません。ライフは家庭に限りません。1市民には仕事、家庭、地域という3つの側面があります。最近ではワークライフバランス=子育て支援、あるいは女性支援、という色がつき始めているため、ワークスタイル・イノベーションという言葉を使う企業も出てきています。ワークの土台がライフであり、寝る時間があること、子育て、介護、地域活動、趣味など、質の高い生活が質の高い仕事につながるという相乗効果があります。
ダイバーシティに関して言えば、女性、外国人、障害者、という順に焦点が当てられているように思いますが、私は外国人と障害者は順序が逆だと思います。というのも、多様なニーズを持った障害者とって働きやすい職場を作る、というマネージメントのノウハウは、必ず外国人雇用にも活かせるからです。障害者雇用も経営戦略として考えることが出来ます。例えばイギリスでは、多動性障害者の「ジグソーパズルが早い」という特性を活かし、彼らに地図のマッピング作業のような仕事に就かせています。日本でもシングルマザーの障害者を数100人単位でテレワークの仕事に就かせている事例があります。

自治体の活性化にも有効
また、企業のみならず自治体戦略としてもワークライフバランスは有効です。例をあげると、イギリスでブレア首相がWLBキャンペーンを打った時期、バーミンガムが大々的なキャンペーンを行いました。それまで堅いイメージがあった地域でしたが、「ワークライフバランスを求めるならバーミンガムへ」という広告に多くの若者がロンドンから移住し、それに伴い企業誘致にも成功しました。この成功例を受け、日本でも三重県がキャンペーンを開始、福岡でも実施予定です。

遅れているが、あきらめている日本
海外のシンクタンクの調査によると、世界24ヶ国のうち日本は「不満を持つ人の割合」が最も多く、48%に達します。その一方で、「改善を試みたことがない割合」も高く、“不満は大きいが、あきらめてしまっている”という特異な状況にあります。

 

「英米型」「欧州大陸型」の社会観
ワークライフバランス関連の施策は、大きく2つに分けられ、「英米型」「欧州大陸型」と呼ばれています。日本には主に英米型が入っており、欧州大陸型はまだあまり入っていませんが、今後は後者が主流になってきそうです。
特徴は、英米では個人は個人という観念が主流で、国や自治体による家族政策はあまりありません。民間の企業がこれを補完する形で、積極的に託児所や休暇制度といった施策を実施しています。一方ヨーロッパ大陸諸国では、公共政策として、国や地方自治体がWLBに積極的に取り組んでいます。しかしそれに加えて企業も、上積み措置として、企業責任としてのWLBプログラムを提供しています。
各地域の特徴を分類したのが下記の表です。日本は家族主義で少子化対策に消極的な「母親家庭保育型」、ドイツと同じ分類です。同じく家族主義であるフランスは、普仏戦争敗北の頃から積極的に出生促進を行っており、そこが日本と違う点です。

 

家族主義(子育ては女性)

個人主義(子育ては男女)

少子化対策に積極的

「出生促進型」
フランス語圏

「男女共同参画型」
北欧諸国

少子化対策に消極的

「母親家庭保育型」
ドイツ語、南欧圏、日本

「不介入型」
米国、英国

現在出生率は北欧やフランスで高く、日本では低迷しています。出生率については、性別役割分業、つまり、男性は仕事で女性は家庭と考える人の割合が高いほど出生率が低いという見方で最近はコンセンサスが出てきました。

メンタルヘルス改善もWLBの重要な目的
私は、少子化だからワークライフバランスを、とは思っていません。共働き家庭が片働きを上回ってから20年近く経つのにもかかわらず、モデルチェンジがうまくいっていない。そのひずみでメンタルヘルスなどの問題が出てきています。従業員がうつになると、企業は訴訟を起こされるというリスクがあり、そのためにワークライフバランスに取り組み始めた企業も実際にいます。以前ヒアリングをした商社は就職人気ランキングトップ10に入る大企業でしたが、10年前には社員の過労死が深刻な問題で、そこからWLBに取り組み始めたとの事でした。

「粘土層」と「蓮の花」
ワークライフバランスの制度は約200種類あります。これは、全て取り入れなければいけないというものではなく、規模・業種・社員構成・企業理念によって組み合わせがかわります。しかしもっと重要なことは、制度があればよいというのではないこと。ようやくこのことが気づかれ始めてきました。制度の運用、つまり仕組みを浸透させることが肝心で、これは制度では補足出来ない要素です。従業員の意識改革が必須ですが、意識を変えることは不可能に近い。いかに気づきのきっかけを与えることが出来るか、が問われます。
多くの場合WLBの浸透を阻むのは部課長クラス、これを私は「粘土層」と呼びます。固着して浸透しない。しかしそんな中でも「良い上司」はいるもので、そういう上司を「蓮の花」と呼んでいます。活躍している女性に話を聞くと、「いい上司に恵まれた」「上司の理解がある」という答えが返ってくることが多い。制度がその企業にあったとしても、上司が理解のある人かどうかで職場環境は全く変わってくるというわけです。

バリバリ、イキイキ、ダラダラ、ヌクヌク
従業員には4種類がいます(バリバリ=仕事重視・生活軽視 イキイキ=仕事重視・生活重視 ダラダラ=仕事軽視・生活軽視 ヌクヌク=生活重視・仕事軽視)。WLBの目的は「イキイキ社員」を増やすことです。
高度成長期の日本人は「バリバリ」にあたりますが、私は決してこれを否定しているわけではありません。むしろ尊敬しています。しかし、今のバリバリ社員は違う、「偽装バリバリ」か「過労バリバリ」です。偽装バリバリは俗に言う「5時から社員」。日中に都内の公園に行けば、明らかに営業っぽい男性が昼寝をしているところを見ますね。また、ある企業の調査では、住宅ローンを持っている社員はそうでない社員に比べ残業が長いというデータも。残業代を稼ぐためと考えられますが、中には偽装もいるのではと思います。そして過労バリバリは多くの仕事を任されてしまうエース社員、こういう社員のタコの糸が切れてしまう前に守らないと。切れてしまってからでは遅いですから。

英、従業員アンケートによる「企業ランキング」で成功
イギリスはブレア首相によるWLBキャンペーンが行われる前、長時間労働とメンタルヘルスが社会問題となっていました。現在の日本と類似しています。そこで政府が「チャレンジ基金」といって政府が無料のコンサルタントを企業に送り込む制度を設けました。その結果大幅に改善された、というレポートが日本でも広まりましたが、実際にはチャレンジ基金の報告書には信頼できない部分が多くあり、真のWLB推進力は別のところにあることがわかりました。
それが「サンデータイムズ」「フィナンシャルタイムズ」の始めた、従業員評価を入れた企業ランキングでした。ランキングに入った企業に就職応募者が殺到したため、高いエントリー費を払っても応募する企業が一気に増加。このランキングの仕組みは、まず企業お金を支払ってエントリーし、全従業員の名前とメールアドレスを民間シンクタンクに提出、シンクタンクは無作為に抽出した従業員に直接連絡しオンラインのアンケート調査を実施、結果を集計してランキングにするというもの。半年後とに実施され、中小企業と大企業は別々の集計になっていますが、中小はかなり入れ替わりが激しい。上位で安心しているとすぐに他の企業に抜かれランク外になってしまいます。それほど競争が激化し、企業のPRとして活用されています。WLBによって他者との差別化を図り、その結果優秀な人材を確保できます。このように従業員アンケートを取り入れた企業ランキングは、日本にはまだありません。

スウェーデンに見る手厚い休暇制度
ヨーロッパ大陸型の仕事観は、生活軸が強く、休むことを前提としています。産休、育休とも8割以上の所得保証が当たり前、子どもが病気のときの看護休暇も有給です。(日本は無給)。スウェーデンには職場体験に行ったことがあります。月曜日に3割の社員が休んでいる職場もあるのです。私の行ったオフィスでは、部下が上司に電話をかけて「昨日までの休日の気分が抜けず憂鬱だ、こんな状態で職場に行っても良い仕事ができそうにないので休みたい」といっている、日本なら一喝されるところですが、なんと上司の返事は「君の気持ちはよくわかる。一日休んで元気になるよう祈ってるよ。」この会話には非常に驚きました、なんてメンタルの弱い人達、とも思いましたが。
スウェーデンは、「Mother Index Ranking」で母親が最も子育てしやすい国に2年連続で一位に選ばれた国です(2003~2004)。日本は先進国中最下位どころか、韓国、カザフスタン、ウルグアイよりも低い25位(2002)。しかも、労働生産性でも日本はスウェーデンに負けています。日本はサービス産業では求められるサービスの質の高さで生産性が低いということもありますが、それでもホワイトカラーの職種でまだまだ無駄が多い。例えば、紙と会議が多すぎるということです。こうした無駄な部分にメスをいれようというのがワークライフバランスです。ダラダラでは、家族や部下まで巻き込んで悲惨な結果を生むだけです。
育児休暇に関してですが、スウェーデンでは両親の休暇制度は30年前からあり、10割の企業が導入しています。女性は9割近く、男性は8割が取得、これは公的機関でも民間企業でも大差はありません。費正規社員でも取得しています。対して日本では6割の企業が制度を導入、男性の取得率は1%未満です。対照的なのは、スウェーデンでは休んだら評価が上がるという企業が50社中20社ありました。その理由は「タイムマネージメント能力が上がる」「責任感が増すので会社への忠誠心も強くなる」「子育てという社会的に意義のある活動を評価して」というもの。キャリアロスになってしまう日本とは、発想が全く違います。日本では唯一、安藤さん(FatherringJapan)の関わっている絵本制作会社が、育児休暇を取った男性の給与を5万円上げるという制度を設けているそうです。

ノウハウを共有する、というカギ
日本の休暇取得率が低い背景の一つに、自分のノウハウを自分ひとりで抱え込むという文化があると思います。「自分がいないと会社はやっていけない」と思いたい。逆に欧米やスウェーデンでは、全ての作業内容やノウハウをオープンな共有地にすることで全体の底上げを図ります。自分の仕事をオープンにすることで、休んでも誰かが代わりにその仕事をやってくれます。このようにワークライフバランスにとっては個人の暗黙地をオープンにするということも重要な要素です。
オープンにするという過程でもうひとつ重要なのが、無駄な仕事を洗い出すということです。「自分がやらなければ」と長時間労働をしている上司の仕事を実際洗い出してみると、周りの期待値はそれほどでもなく、「やらなくてもよい仕事」だったというケースも多々あります。

数値だけでは解決しない
昨年末に「ワークライフバランス憲章」が出されました。数値目標は必要かもしれませんが、それだけでは解決しないと思います。例えば一日だけ育児休暇を取った男性も人数に数える、そのような見せ掛けの数字が出てきてしまっています。
「時短」もそれだけでは判断できません。例えばダイバーシティに熱心に取り組むある企業では、分単位で業務を洗い出し、基本時間を単位化するという作業をしていますが、この重要な行程にはどうしても多くの時間がかかってしまいますので一時的には全く時短になりません。

自分には関係ない、と思っている粘土層をなんとか変える
WLBはワクチンのようなものだと思います。それが必要なのはまず粘土層の人達です。例えば私がある企業で話をしたときの事例をご紹介します。
営業のエースである部長は「私が若い頃はそんな甘っちょろいことは言わなかった」という態度で、「企業のために死ねたら本望」と彼が言うと拍手が起こりました。そのような部署でしたが、部下の社員は過度のストレスでいかにも赤信号が出ている状態でした。この部長のように「自分には関係ない」と思っている粘土層の人こそ変わってほしい。この企業で取った対応策はというと、部長が尊敬しているという同社の会長に直接ご相談しました。すると聡明な会長は万歩計を買いに行き、部長を呼び、「君のような優秀な社員には長く活躍してもらいたい、それには“持続可能な”働き方が必要だから、早く帰ってこの万歩計でも使いなさい」と。部長は「会長が私の健康を気遣ってくださった」と感動し、途端に早く帰るようになりました。
ワークライフバランス施策には、いろいろな方法論があります。

質疑応答
木全:派遣コンサルタントやアドバイザー養成講座などがワークラフバランスビジネスになってくると、講座を終了した者がコンサルタント、アドバイザー資格があるかの現象が流行し、本質を全く分かっていない人が入ってきますね。それは効果がないどころか、社会にとって全くマイナスです。

渥美:その通りです。例えば内閣府主導のもので、10社に対してコンサルタントを派遣するという施策がありますが(パクさんもコンサルタントの一人)、実際は最初と最後にアドはバイスをするだけ。それではコンサルタントになりません。ワークライフバランスは即効性のあるものではなく、10年とか長くやっていかなくてはいけない。「ワークライフバランスなんて全然効果がない、経営戦略にならないじゃないか」という色がついてしまう前に、地道に長期的に取り組む企業が増えてほしいです。

古市:企業で話をするというのは、どこからの要請なのでしょうか。

渥美:情報はGive & Takeです。これまでの調査結果を、企業名を匿名化した上で「こんなことをしている企業があります」とご紹介した上で、その企業の情報をいただく。それを続けているうちに、「うちにもアドバイスを」という話になります。

木全:それは渥美さんの現在のポジションに対する依頼なのですか。それとも、個人に対してですか。

渥美:自分個人です。私の会社は自営業者の集まりのようなものです。ただし、イントラネットには企画書から全ての膨大な数の書類を載せています。同僚は自由にその情報を見ることが出来、真似することが出来ます。自分が苦労をして集めた情報を共有するのは複雑な思いもありますが、ダウンロード回数が増えると自分の評価があがるという仕組みになっていますし、それに先ほどの「個人の暗黙地を作らずオープンに」という視点から見ても重要なことですよね。

木全:目的は社会を変革することですから、同僚も手伝ってくれていると考えればいいのかもしれませんね。

渥美:正にその通りです。

堀井:先ほどの、従業員の評価を含めた企業アンケートは重要だと思いました。日経WOMANの企業ランキングなどでは、当の従業員が「これで良いと言われちゃ困る」という程度のたいした事ない企業も上位にランクインします。メンタリングしてみると「関連子会社に該当制度がある」くらいでその欄にチェックを入れている。○をつけて、○が多ければパーフェクト、と。ランキングの発表が就活時期なので、上位にランクインするとアクセスが増え、優秀な女性が集まるようです。企業ランキングに従業員の声を反映させるのは大変重要です。

木全:日本の社会で実施している企業があまりにやっていないので、その比較において少しでもやっているとそれだけで○をつけることがまかり通っているのでしょうね。

森本:実際に、部署の中にどう広めていったらよいのでしょうか。

渥美:思いやりです。ある企業では、財務を担当するヒラの女性社員の子どもがインフルエンザにかかったというだけで、経営者は「経営危機だ、大変だ」といい、2週間その女性社員の子どもを中心に会社がまわったようなものでした。彼女が会社にとっていかに大切かということをこの経営者はわかっています。
基本的には「性善説」でないと成り立ちません。これは訓練してできることではないですが。テレワークにしても、サボると従業員を疑ったらとても任せられません。別の事例では、パートにも正社員同様の休暇制度を与えている企業で、あるパートの女性が看護休暇を取りながら遊んでいた、普通ならば制度を取り上げるかその女性を呼び出して叱責するところですが、この企業は従業員を信用し、何もしませんでした。そうしたら従業員同士で「悪用しちゃダメでしょう」と言い合うようになり、悪用がなくなりました。最後まで信用する、ということが大切です。

清水(敬): 私は商社で働いていましたが、プライベートの話をするのはみっともない、という文化がありましたね。男は仕事。そのように、自分はこうと言い出す企業文化が全く出来ていないところにどうやって浸透させることができますか。

渥美:私は社内で育児休暇取得の第一号でした。自分の事情をオープンにして、「今子どもが熱だから、早く帰るかも」と早くからまわりに言うようにしています。

清水(敬):まずは自分からさらけ出すということですね。東レはどうでしょうか、そういう話はしますか。

森本:子どもがいる、というのはお互い知っていますが、熱があるとか、そういう話まではしませんね。また、想像力が欠けているということもあると思います。子どもを持ったことがないと、子どもが熱を出すとどれだけ大変かが想像できない。介護についても、介護をしたことがないからどのような状況なのかがわからない。でも、子育てや介護に限らず、「デートなので早く帰りたい」ということも立派な理由になると思います。そういうのも重要。ライフの話題をもっと共有していくことが課題だと思います。

堀井:日本には職務記述書がないのが問題です。欧米には必ずあり、自分はこのために雇われた、という具体的な仕事内容を、本人もまわりもわかっています。だからその人ができなくなっても、この仕事はあの人、この仕事はこの人、と分け合うことができます。欧米の企業は、人間関係がドライと言われるけど、実はプライベートのことは良く知っています。皆オープンに話し合います。その企業に柔軟性があったのは、女性、外国人、障害者、といろんな人がいたからかもしれません。単一だと知恵が働かないのかもしれないですね。

森本:私が以前に務めていた会社も会議が23時からあるようなところで、3年いたら疲弊してしまいます。トップも勤務時間で評価していました。キャリアパスは提示されるのですが、家族のために使う時間などは見えてこなかったです。

渥美:トップと人事が関心がないと、ワークライフバランスを進めることはできません。ストレス度や従業員満足度のデータを取ると、それの結果を見て、聡明なトップならそこで気づきます。
もうひとつ、エース社員がマネージメントになることにも問題があります。そういう人は、できない人のことがわからない。野球の名選手が必ずしも名監督でないのと同じでス。マネージメントのスキルは別のところで身に付けさせる必要があります。

清水(敬):JKSKサロンのなかで治部れんげさんが「なぜ米国女性は昇進も子どももあきらめないのか」というテーマで話をした中で、米国は制度があるのではなく、上司との関係によってそれが可能だとおっしゃっていました。上司のマネージメントの責任は大きいです。

堀井:トップはそういう上司を作っていかないといけませんね。

 

 
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