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ワークライフバランス研究会

第5回 JKSK拡大ワークライフバランス研究会 

日時  2008年9月28日(月)15時から17時
場所  パレスホテル IVYハウス(B2)

在宅勤務(テレワーク)の展望を考える~[正社員]の柔軟な働き方に向けて~

【 講師 】パク・ジョアン・スックチャ氏(日本ワーク/ライフ・バランス研究会代表)

木全:本日は、ご多用な中、ご参集下さいましてありがとうございます。本日はワークライフバランスコンサルタントとしてご活躍の当研究会会員でもあります、パク・ジョアン・スックッチャさんに、「在宅勤務(テレワーク)の現状と展望を考える」と題して、企業での実際についてお話をいただきたいと考えております。まず最初にパクさんからお話をいただき、その後意見交換を行えたらと存知ます。

パク:まずは「柔軟な働き方」に関して少しお話したい。ある米国の調査で、企業が最も成功したと感じるワーク・ライフ・バランス施策と、社員が最も感謝するワーク・ライフ・バランス施策が同じ答えだった。それは柔軟な勤務形態。米国のフルタイムで働く男女がほしがっているのはフレキシビリティ(柔軟性)だ。他の多くの調査結果でも同じ傾向が出ている。特に専門職や管理職の人たちがフレックスタイムや在宅勤務を取得している。私は2000年にワーク・ライフ・コンサルタントとして独立した時からずっとフルタイム正社員に対して働き方の柔軟性を促進するコンサルティングを行いたいと思っていた。しかし、当初日本では企業からのニーズとしてほとんど出てこなかった。フレックスタイムに関しては2002年ごろから廃止する企業が出てきており、導入率も増えていない。日本では、働き方に柔軟性がほしいのであれば非正規社員になればいいという考えがある。

木全:希望しないということは、自分のやりたいことや自分の人生をこうしたいという目標がないからではないか。

佐々木:男には仕事、会社がすべてなのではないか。家庭がないのではないか。

堀井:男性もフレックスタイムをとって朝早く来て夕方早く帰る仕事の仕方をしていた。日本には通勤が車ではなく電車なので課題もある。

笹田:フレックスを提案しても、営業から「お客さまが・・・・」というと「そうだ、そうだ」と回りからほめられたりする。若い独身者も、早く帰っても一人ぼっちになり、何をしていいかわからないという。

パク:フレックスタイムを利用すると、日本では朝遅く来て、夜遅く帰るという働き方になる人が圧倒的に多い。私の知る限りフレックスタイムを導入すると「ズレックスタイム」になるのは日本だけだ。

佐々木:仕事の結果で評価をするようにしたらそんなに長く働かないと思う。

堀井:日本では、成果主義を取り入れないから。プロセスが大事だという日本型経営の問題がある。

パク:ここ数年メンタルヘルス問題が増大してきており、長時間労働だけでなく、パワハラやコミュニケーションの欠如なども大きな課題になってきている。

佐々木:大手企業から仕事をもらっている傘下の企業は大変らしい。メンタルヘルスの問題で会社が崩壊寸前のところも出てきている。

パク:私の仕事では「在宅勤務導入」に関する相談やコンサルティング依頼が増えており、ようやく日本でも本腰を入れて働き方改革に取り組む企業が出てきたことを実感している。
政府も在宅勤務を含むテレワークに対して非常に積極的で、2007年5月に「テレワーク人口倍増計画」を打ち出した。2010年までにITを活用し時間と場所を自由に使った柔軟な働き方をするテレワーカーの就業人口比率を20%にすることが目標である。

公表されている情報によると、2007年に松下電器が対象者3万人に在宅勤務を導入し、現在日本では最大規模だ。技術関連企業ではその他も全社員対象という大規模で導入するところが多い。対象者数でみると日本HP 6千人、NTTデータ8千5百人、日本ユニシス9千9百人、NEC2万人、富士通2万8千人、などとなっている。
育児・介護のために導入しているのが、サントリー、ソニー、帝人、マツダなど。ただ、育児介護のために導入すると「在宅勤務は特別な人のための特別な働き方」と言うイメージを植え付けてしまうと感じている。

私が在宅勤務導入のコンサルティングをさせていただく時はクライアント企業に、対象者を育児介護に限定しないことを薦めている。また「会社から離れた自宅で仕事を遂行すること」はやりたい人全員が平等にやれるものではないと理解してもらうようにしている。在宅勤務には、適している仕事と適していない仕事があり、適している人と適していない人がいる。まず、適している「仕事」と「人」を見極める必要があるのだ。例えば自己管理能力や時間管理能力などのスキルが重要になる。また性格的にも、仕事とプライベートをきっちりと分けたい人は向いていない等。

また、マネージャーは仕事を成果物や貢献度で評価することが求められる。「目の前」にいない社員を今までのように見て管理はできないので、明確な目標設定をしているか、成果で評価をしているか、などを確認しなくてはいけない。そして、先ほど指摘したが、在宅勤務の対象者を育児や介護のためだけに限定していない。在宅勤務を希望する理由は人それぞれあって良い。趣味のマラソンの練習時間をとりたい人、子育てに使いたい人、夜間大学に通いたい人など個人のニーズは様々だ。理由によって在宅勤務の適性は左右されない。

在宅勤務が成功するかどうかは、「人」がカギになる。上司、在宅勤務者そして在宅をしない同僚とのコミュニケーションが大切なのだ。

奈々:アメリカと日本とでは社会の要求するものが違うように思う。日本は有能な人がメンタルヘルスの問題が大きな課題となっているいま、在宅勤務を促進することが問題解決につながるのだろうか。

パク:メンタルヘルスは職場のコミュニケーションの欠如が大きな問題だ。在宅勤務を実施すると週一回でも通勤時間が削減され、その分自分のために時間の有効活用ができるので、満足度は上がる。また、意識的コミュニケーションを図る必要が出てくるので、上手く行えばチームワークとコミュニケーションの向上につながる。実際に私がコンサルティングを行った企業での効果測定でも、複数のチームで向上したという結果が出ている。

大沢:アウトプットに対しての評価制度がきちっとしている必要があるのか。

パク:その人の仕事の成果が全部在宅勤務で評価されるわけではない。その点では在宅はまずは週一回が適切な頻度だと思っている。

堀井:自分で仕事をしていかないといけないので、出た成果だけではなく、その人のアウトプットに期待するものがきっちりしていないといけない。

佐々木:在宅の場合は自分の時間を全部自分のために使えるのがメリット。ただ日本人には仕事とプライベートをオンとオフで切り替えないといけないと考えている人も多い。自宅だとだらっとしてしまうこともありうる。

山崎:議員になって自宅で仕事をするようになったが、自宅だとジャージのままで仕事したりしてしまい、どうもぴりっとしない。服装を整えるのも大切だと思う。

パク:私のあるクライアント企業での在宅勤務利用者の6割は男性だ。また、その企業では勤続年数は10年ぐらいの社員の利用者が多い。

在宅勤務のメリットは、仕事に集中できること。オフィスにいる時と違い中断がないので没頭して仕事ができるのだ。そのほかのメリットとしては、生産性が上がる、家族とのコミュニケーションがよくなる、アフターワークにスポーツができたり、趣味の時間が作れたり等が挙げられ、在宅勤務をした本人の評価は非常に高い。上司側からも、オフィス勤務だけの時と比べて効率的に仕事を進めるようになり、時間管理能力や計画性が向上したという意見が多い。

2006年の日本企業での在宅勤務導入率は4.6%だった。最新の調査でのアメリカのテレワーク導入率は42%。カナダでも40%に上る。その他の国では北欧諸国やオランダが高くなっている。アメリカのテレワーカーの特徴としては高学歴、高収入で、専門職・マネジメント職の人が多くなっていることだ。英国では在宅勤務取得者の64%が男性で、34%が女性という数字が出ている。その意味では、在宅勤務は専門職、管理職など、創造的に考える仕事に向いているといえる。

堀井:管理職が在宅勤務をする場合、部下からみてどうか。

パク:クライアントによって管理職も対象にする企業とそうでない企業に分かれる。私は管理職も行う方が良いと思っているが、クライアントの意向が優先だ。管理職が在宅勤務を行っている企業の部下は上司がつかまりやすく、メールや電話でのレスポンスが早いなど評価は上々だ。

笹田:在宅ワークに適した職種はどうか。

パク:週一日という前提で自分ひとりで没頭する仕事は、ホワイトカラーであれば、どんな職種でもあると思う。いくつかのアンケート調査でも80%の在宅勤務者が在宅勤務に一番適した頻度は、週1回という結果が出ている。毎日在宅勤務を行う完全在宅は海外でもそれほど多くない。欧米での実施頻度は週2,3回が多い。

渥見:日本の事情で週一回がいいと答えているのではないか。海外での完全テレワークでは孤立感からメンタルヘルスになるケースもある。情報漏えいとか労災リスクとかもある。問題は仕事を標準化して業務を効率的にするなどができていないことだと思う。
ジョブディスクリプションをつくるなど、テレワーカーの評価が大切。実際にうまくいっている例として、松下電器では、週2回をメインにしてやっている。松下では、在宅勤務をやりたい人はデータベースに検索をかけて広がっていく仕組みをつくっている。実際にインセンティブをつけて業務の効率化を目的としているから、これにより生産性があがったと聞く。
実態としては、上司が仕事を自宅に持ち帰り、結果としてテレワーカーとなっている、ふろしき残業は実際にはある。

パク:長時間労働になりやすいのは在宅勤務のデメリットでもある。仕事に没頭するあまり、のめりこみやすいから、欲がでてどんどん仕事をしてしまう。

佐々木:会社としてはばんばんざいですね。好きで、喜んで、どんどん仕事をしてくれるわけだから。

パク:企業側のデメリットとしては、打ち合わせや会議がやりづらいことや、コミュニケーションがとりにくいこと。孤立感を生むこともしばしば挙げられるが、週一回だとほとんど問題にならない。

誰にも見られていない自宅で自分を律しながら働くことは容易ではない。例えば朝寝坊するとか、休憩を取りすぎる等の誘惑が出てくる。しかし在宅勤務では、会社にいるときと同じレベルの仕事を遂行することが求められていることを在宅勤務者には理解してもらっている。上司との信頼関係が何よりも重要だ。

もう一つ大切なのはチームワークだ。特にフォーマルなコミュニケーションより、インフォーマルなコミュニケーションが大事。在宅勤務をきっかけにして、チームワークやコミュニケーションが向上する可能性はある。

木全:社会として導入は4.5%からなん%くらいが妥当な数字なのか。

渥見:中小企業ではすでに、数字に表れていないが柔軟な対応をしている。

笹田:だれでもではなく、適性は厳しく見たほうがいい。営業出身の社員の話では、前職では会社にくるなといわれて客先を直行直帰していたが全く所属意識が満たされないといってその会社を辞めてきたという例もある。

 

 
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