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ワークライフバランス研究会

第8回 JKSK拡大ワークライフバランス研究会 

日時  2009年3月23日(月)15時から17時
場所  六本木ヒルズクラブ

FJの活動の経験から、WLB推進への提言

【講師】安藤哲也氏(NPO法人Fathering Japan 代表)

木全:本日は、ご多用な中、ご参集下さいましてありがとうございます。本日はケーススタディと言うより、先のシンポジウムのパネリストのお一人であり、模範的な活動を展開されている、ファザーリングジャパン代表の安藤哲也さんに「FJの活動の経験から、WLB推進への提言」と題して、取り組みをお話いただきたいと考えております。その後、様々な経験をお持ちの参加メンバーの皆様と共に意見交換をしていただきお役に立てればと思っています。

安藤:まず私の自己紹介ですが、現在47歳の寅年生まれ。11歳、8歳、1歳の3児の父親です。明治大学を卒業し、出版社に勤務し、30歳で本屋の店長になりました。その後図書館流通センターのオンライン書店の店長をし、糸井重里さんの会社に入社。そこも4ヶ月で辞めて書店のコンサルタントをやっていました。その後、ケータイ本の立ち上げ、楽天ブックスの立ち上げを4年勤め、06年11月に、会社員をしながら、NPO法人ファザーリング・ジャパンをここ六本木ヒルズで立ち上げました。ちょうどその頃、家族を取り巻く事件が起こった時期でした。父親のDVに耐えかねて息子が父を殺した奈良県の事件です。息子を幽閉し、医者になるべく勉強を強要する父親。この事件のニュースを見たとき、はじけるものがありました。こういう父親が多いのではないか、父親を楽しくやろう、それが子どもの健やかな成長につながると。その日の夜に提案書を書いて一人ひとり父親たちに話して歩きました。みんなぼんやりと思っていたといいます。そして。「本気なら、手伝うよ」と言ってくれました。

今は、職住接近で、WLBをとりながら、昨年一昨年の2年間、娘と息子の通う小学校のPTA会長を務めました。唯一の男性として改革して来ましたが、この春次の父親2名を含む世代にバトンタッチしました。地域の活動をするなかで、小学校の統廃合の問題が浮上しました。
そこで15人のお父さんが立ち上がり、霞ヶ関の官僚や住職、エンジニア、サラリーマンなどのスペシャリストたちがオーシャンイレブンのような気分で、廃案に持ち込みました。
場をつくってあげれば、男性たちも地域に帰ってくるんだと実感しました。
今はNPO の仕事を楽しんでいる毎日を送っています。
また03年から、ボランティアで子供たちに絵本の読み聞かせをする“パパ‘S 絵本プロジェクト”のメンバーとして、全国の図書館や保育園、自治体などでパパの出張お話し会を開催しています。

ファザーリング・ジャパンは、セミナーやワークショップの開催をはじめ、第一生命経済研究所と共同して調査やパパ力検定なども行っています。
セミナーやワークショップは初めのころは年間25回くらいだったのですが、今では年間110回と急激に増えつつあります。土日はすべて埋まっていますし、3日に1度のペースで実施しています。
また、若年層への早期教育として法政大学と都立西高校で開催をしました。若い次世代パパ、ママたちは反応がよく、ソーシャルアントレプレナーになりたいなど、希望のにおいがしました。また女子学生は、結婚出産後も仕事を続けるにはパートナー選びが大切だと言っています。
若い人たちは、バッドモデルを見ているので直感的にわかっています。若年層教育はしばらく続けて生きたいと思っています。
現在、法人会員は6社、ダッドウェイ、星野リゾート、クリナップ、NTTドコモ、三井ホーム、ニフティです。

また、定額給付金を父子家庭支援への寄付にしてフレンチトースト基金を作りました。
69のNPOが定額給付金ファンドをたちあげます。堀田勉さんらは日本に寄付文化を、ファンドレイジング文化をつくっていこうとしています。
その一つとして、ファザーリング支援をします。シングルパパも笑顔で子育てできるよといいたいのです。父子家庭になって前より父子関係が良くなったと。160万のシングルパパ世帯すべてが笑顔を取り戻せるように。

1年前に妻と死別した32歳のシングルパパの例では、2歳の娘の子育てと仕事の両立に悩み、仕事をやめざるをえなくなり、就職活動も10連敗とうまくいかず、現在は生活保護によって暮らしています。ネットもファックスも無い生活。今まではこういうことが見えなかった。情報が集まってくる装置をつくり、ムーブメントを盛り上げてやっていきたいと思っています。

企業や労働組合のFJセミナーでは、WLBの考え方のレクチャーをします。また三重県で実施したママを締め出してのパパトークの会では、パパたちの子供自慢からはじまり、最後は、ママがわかってくれないと、妻への不満に終わります。実際に、“門番としての母親”が障害となって、パパの家庭参入を阻んでいるといわれています。カナダではこれは証明されていることです。

FJワークショップは、父の家庭での居場所作りを目的として開催しています。家庭で父の仕事が無い。家にいてやることがないのです。せいぜい、ゴミだし(ゴミ袋移動と呼んでいます)と犬の散歩、休日は買い物の運転手ぐらいのもの。僕の場合は、絵本のよみきかせをやっていました。
ワークショップでは、父と子の工作教室を開催しました。父と子が共同作業をすることはとても大切なことです。また、パパのためのコーヒースクールも開催しています。NTTドコモと組んで、タリーズコーヒーから先生を派遣してもらい、ソフトをFJが提供するという形で行っています。いきなり料理ではハードルが高いと思うパパたちに、まずは、ハードルの低い、「コーヒーを入れる」うんちくまでを教えてあげて、家庭でのかっこいいパパをアピールする目的でやっています。これは今後コンテンツを増やしていこうとおもっています。

 

FJ料理教室は、広島県で開催しました。ビストロパパと呼ばれるパパ料理研究家が仲間にいます。彼は1000日連続でレシピをWEBに公開しています。
たまねぎを切ったことも無いパパたちが悪戦苦闘して作る料理に、ママは「やればできるじゃない」と褒め、娘が「パパ、おいしい!」といってくれる。その達成感は、会社では絶対味わえないものだといいます。

FJツアー(父子旅行)は、軽井沢の星野リゾートと組んで実施しました。大手損害保険に勤めるAさんは、平日は毎日ほほ終電帰りで、今回は妻が申し込んだので、仕方なく2年ぶりに有給休暇をとってやってきたというつわものです。娘と二人の関係が最初はぎこちなかったのですが、帰る頃には、親子とも仲良くなっていました。後日メールで、子どもはかわいいなと思うようになりました。週に2日は夕飯に間に合うように帰るようにしています、とのことでした。またこのパパの妻からもメールで、「行ってよかったと思います。夫が表情が変わりました。」と喜びのメールが寄せられています。

子育てパパ力(ぢから)検定は、何がただしいか、というよりも、夫婦のコミュニケーションを増やすのが狙いで実施しているものですが、今の受験世代の若いお父さんたちは、正解を求めて勉強して受験をしています。
2008年3月16日(日曜)に開催しました。全国7都市で開催され、最高齢は75歳の男性が受験していました。東京会場だけで600人を超す受験者がいて、関心を持つのが自分だけじゃなくたくさんいたことに、「勇気付けられた」というコメントも寄せられています。

受験をきっかけに、スイッチがはいるお父さんも増えてきています。
「以前は育児に関心が無かったけれど、生まれた後は可愛くて。毎日違う顔になる娘を見るのが楽しみで、生活は娘を優先しています」

男性の子育ての悩み

1.仕事が忙しくて育児時間が取れない

まだまだ多くの父親たちは、仕事が忙しくて育児時間が取れないといいます。日本の男性の育児時間は1日平均30分。家事の平均10分をあわせると合計40分です。これは、先進国中最短時間です。背景には、長時間労働、仕事優先の生活、過労によるうつなどがあげられます。

2.子どもとどう向き合っていいかわからない。

これは、ママからの相談を良く受けます。子どもの扱い方がわからないお父さんです。
子どものころに、群れ遊びをしていない、子どもと触れ合う機会がなかったお父さんたちが、
どう扱えばいいか教えて、と答えやノウハウを求めてやってきます。テクニカルなものだけではなく、とりあえず一緒に食事をして、といっています。そして、週末だけパパをやるのではなく、毎日家族とともにいることを実感することが大事だといっています。

3.子どもが生まれてから、夫婦関係が悪化した

これは男性の5割が、女性の7割が悪化したと答えています。理由は、子どもが生まれると妻と夫では、大事なものが違ってきます。ママは子どもが大事。パパは自分が大事。パパの自己実現欲求が強すぎるのです。夫婦関係の悪化は、子どもに悪影響を及ぼすことを気づかずに子どもの非行などが深刻化するケースもあります。

このような課題とともに、父親不在、母親の過干渉が子育てにどのような影響をおよぼすのかといえば、世界で一番安全なはずの家庭が安心できる場ではなくなるのです。子どもの自尊感情がひくくなる、居場所がなくなる。子どもの自立を阻害する。そして、子どもの恋愛感情や異性意識が歪むといったことが挙げられます。援助交際をする女の子にはいいと言われる家庭の子が多くいます。家庭で本当の愛情を学べないから本能として、別の形で学ぼうとしているのです。
また、ママがSOSを出していてもパパが気づかないと、ママは3回以上はSOSを出さなくなり、母子カプセル(コクーニング)という状態になります。これはいじめの構造ともまったく同じです。こういうふうに育つ男の子は、失敗をすることなく、常に守られている状態です。現在の男の子のメンタルが弱いといわれる原因の大きな要素を占めると言われています。

FJでは、父親たちに、今の自分たちが追い込まれている現状をみて、育児をする楽しみを奪還しよう!と言っています。
1950年代から70年代には、まだあった家庭や地域での父親の存在が、バブル以降、成果主義などが進み、父親たちの心身すべてが会社に属するようになり、家庭や地域は別世界という流れになってきました。

父親が育児にかかわるメリットは、下記のとおりです。

  1. 母親の育児ストレスが軽減される。いま、子どもへの虐待が申請されているだけで4万件といわれています。実態はもっと多いと思われます。パパの支援をすることで、母親の笑顔が増え、子どもに好影響を与える、という循環を生みたいのです。
  2. 夫婦関係が強まる。第2子以降の子どもを持つ夫婦は夫婦関係がいい夫婦です。少子化に貢献できます。
  3. 子どもの成長にいい。父親から社会のルールを学びます。
  4. 自活力がつく。定年後や老後も安心です。
  5. 仕事で有効な能力が身につく。時間管理能力やマネジメント能力などのアップが図られます。マルチタスク能力と読んでいます。
  6. 父親自身の世界が広がり、人生がたのしくなる。

家で笑っている父親になりましょう。

そして笑う父親になるための6か条として、1.父親ソフトを入れ替えよう。2.義務から権利へ。さらば家庭サービス。3.男の育児は質より量。いいとこどり育児をやめよう。4.子育てパパは、仕事もできる。育児で備わる3つの能力。5.妻の人生は、夫のものではない。6、地域活動を通じてシチズンシップを獲得しよう。

父親の子育てを支える環境づくりとして、若いお父さんにも響くワードやロジックを使って次の4つがオセロの4角と呼んでいます。4つが白に変われば、中の父親たちも全員白に変わります。
まず、行政・自治体は、今までは制度だったが、これからはソフトの時代。子育てがしやすい街というブランドを手に入れるようになると住宅の資産価値が落ちないという話しをしています。
2番目は企業。就労環境の見直しや、制度改革、評価基準の見直しなどとともに父親研究の導入を図っています。
3番目は、地域社会。保育園や学校、学童クラブ、町会、地域のNPOなどコミュニティの活性化や父親ネットワークづくりをやっています。
最後は、家庭。実は個々が一番の抵抗勢力です。性別役割分業意識が強く、育児休暇を父親がとろうとすると妻に強く反対されるのが現実です。みっともない、世間体が悪い、働いて早く出世して!と言われています。

WLBの誤解について
豊かな人生のための寄せ鍋理論とよんでいるのですが、WLBは自分の生き方の問題です。企業の労務管理の問題ではありません。そして、早く帰ることが目的ではなく、早く帰って何がしたいのか、が早く帰る目的。また、ワークとライフのどちらかの「やじろべい」ではなく、全部入った「寄せ鍋」でいこう!と言っています。
それは、育児や介護、趣味や地域活動なども仕事に活かせることがありますし、反対に仕事のスキルを地域で活かすことも可能です。
例えば育児は劇的なチャンスを与えてくれることもあります。私の場合も、保育園であるママに出会ったのがきっかけで今ここでこんな話しをしているからです。保母さんが洗濯物を間違えたおかげでそのママと話すようになり、彼女がたまたま、朝日新聞で男性の育児欄を担当している記者さんだったことで、保育園のお迎えのことを書くようになり、連載をしました。それが家庭科の教科書に掲載されたのがきっかけです。この後、子育て支援や男性の育児などを調べてみると、まだ一般にはほとんどありませんでした。これは全国で3000万人くらいが対象となります。ビジネス的にもいけると踏んで、今があります。

最後に
父親が変われば、家庭が変わります。家庭が変われば、地域がかわり、企業が変わり、ひいては社会が変わります。

Q&A
建部:マザリングジャパンがないといけないと思いました。母親たちへのアドバイスはやっていますか。

安藤:母親向けのセミナーもやっています。性別役割意識、母性神話、3歳児神話などに縛られている母親が多いです。そこで、子育ては一人ではできないという話しをします。彼女たちは、メディアリテラシーが弱いと思います。ママ向けの雑誌などの媒体が刷り込んでいる意識がある。きれいなママでいないといけないなど。一世代前の女性に言われるよりは、僕みたいな人間に言われる方がはいりやすいと思います。

堀井:GEWELの調査では、男性の声と若い母親の声をきくと、性別役割分業は強化されているように感じます。政府の介入があればあるほどよくないのではないかと思っています。

安藤:子育て広場は、母親仕様になっているし、母子家庭はいろんな支援があるが、父子家庭は20万世帯もいるが何の支援もされていない。

渥美:滋賀県等、先進自治体では地域活性化にNPOと組んで事業を展開していますが、安藤さんからみてここが進んでいるという自治体があれば教えてください。

安藤:どこということはないが、どこの自治体も、トップの意思が色濃く出ています。

清水:母子家庭に出る手当てが父子家庭には出ないと報道されていました。父の育児は質より量が大事といわれたのが印象的です。実例としてきちっとしなければいけないと感じました。

安藤:専業主夫は10万人いるが、妻が亡くなっても夫には遺族年金がでないのです。
またシングルパパで、年収200万円以下の人も増えてきています。

木全:これからはシングルペアレンツと考えることが必要だと思います。
お父さん、お母さんではなく、子どもの成長を中心に考えて支援することが求められていると思います。組合の代表として連合の方と話しておられますが、連合が働くものの代表とはいえなくなっています。いまでは、組織率は10数%しかいないと言う背景があります。

脇:自分が門番としての母親をやっていることに気づきました。会社ではマネージャー層の理解が低いです。研修をうけたマネージャーなのにもかかわらず、自分の部下の女性が妊娠したというと担当からはずしたという報告がなされています。

佐々木常:ビッグツリーと言う本を、女性向と企業向けに書き直しました。今日の話をきいて、男性が子育てをする意味について欠落していたと気づきました。また書き直さないといけない。特にオセロの4角の考え方は革新的なものです。企業専門にダイバーシティとWLBの話しをしているが、父親が子育てをする意味はまったく入っていませんでした。
昨年は企業のトップの人たちに話をする機会がずいぶんあったので、惜しいことをしたと思います。

 

 
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