女性活用と企業業績
西京銀行取締役頭取
大橋光博
大橋光博
1942年生まれ、鳥取県出身。京都大学を卒業後、日本銀行に入行。釧路支店長、広島支店長を歴任。1995年日本銀行を退職し西京銀行に入行。1997年より頭取に。主な兼任職として、山口経済同友会筆頭代表幹事、中国経済連合会常任理事、(社)西京教育文化振興財団理事長、山口県男女参画推進連絡会議会長など。
著書に「いまどき経済エッセー」(山口新聞社)「小さく、ゆっくりでいい―コミュニティビジネスが元気な理由」(ビジネス社)など。
西京銀行はライブドアとのインターネット専業銀行設立構想で話題になっているが、AIG投資顧問と提携した、SRIファンド「すいれん」(女性に対する就業機会、環境に対する対応などを基準に、優良な日本企業の株式に投資するファンド)の取扱い、託児所に子供を預けている女性向けの住宅ローン金利優遇など、行内での女性活用のみならず、地域と密着し、女性の活躍を応援する銀行として注目を集めている。 |
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最近、男女共同参画といったテーマでの会議やセミナーに引っ張り出されることが増えてきた。
もちろん、社会人になってからずっとこのことに関心を持ち、その場その場で自分なりに取組んできたテーマだけに、こうした会議やセミナーにもなるべくスケジュールを調整し積極的に参加するよう心がけている。
以下、いくつかの視点から私なりに平素感じていることや、これまで取組んできたことなどを雑感を交えつつ整理してみたい。
1、 わが国の女性活用は進んでいるか?
この質問に対し、「進んでいる」と答える人はほとんどいないであろう。
わが国が遅れているのはなぜか、いくつかの要因があげられよう。やはり「意識」と「環境整備」の遅れが大きいように思う。
1986年に男女雇用機会均等法(女性総合職採用の開始など)が制定されてからまだ19年しか経っていない。22歳で大学を卒業した女性がようやく41歳、しかも制度発足当初は「総合職」採用も少なく、定着率もきわめて低い状態が続いていた。当時、前職の日銀でも毎年1〜2名の女性総合職(男女全体で30名前後)が採用され私自身課長職にあり3年連続して優秀な女性総合職を部下に抱えていたことがある。彼女たちのその後の足取りをみると、日銀内でそのまま順調にステップアップするまでには至らず、「どうしてなのか」「何とかならないのか」「人事部は見る目がないんじゃないか」と漠然とした疑問を抱いていた。ただ、この3人とも、その後外資系の金融機関やコンサルティング会社などに職を転じ、それぞれの分野でいかんなく力量を発揮しており、これはこれでよかったのではとの思いもしている。
2、 女性活用を考えるようになったきっかけは?
最初に刺激を受けたのは、福井県の初代女性校長である吉田秀尾さんとの出会いである。男のような名前であるが、年のころ70過ぎの上品でおだやかな感じのする女性であった。当時、日銀事務所長として一緒に貯蓄推進活動をしていたので、毎日のようにお目にかかりいろんなことを教わった。単身赴任が多いなかで、ワイフと3人の子供を帯同して赴任していたが、このことを評価していただき、大変恐縮した思いがある。
次にショックを受けたのは、中国人民銀行行長(日銀総裁に当たる)の鎮慕華さんたちとの出会いである。日中中央銀行幹部同士の交流会が毎年持ち回りで開かれていた。中国側の出席者は総勢7名のうち鎮行長はじめ3人が女性、日本側は総裁をはじめ7〜8名が黒っぽい背広を着た男性集団であった。このときのショックは今もって忘れられない。
これらの2つの出会いはいずれも今から20〜25年前の出来事である。
その後、米国や中国、北欧などに出張などで出かけ、いろんな要人たちと出会う機会が増えてきたが、女性幹部にお目にかかることが多く、わが国の女性登用の遅れを実感している。
3、 しあわせ市民バンクの取り組み
バングラデッシュにグラミン銀行という銀行があり、この銀行をスタートさせたユヌス総裁という人がおられる。すでにマグサイサイ賞を受賞、ノーベル平和賞の有力候補といわれている方だ。実はユヌス総裁のことを教えてくれたのが、松下政経塾初代塾頭の上甲晃さんである。塾での教え子には、全国最年少で当選した山口県柳井市の河内山市長や中田横浜市長、伊藤金融担当大臣らがある。この上甲さんにわが社が日本の銀行として唯一取組んでいる「しあわせ市民バンク」(小口、長期、低利、無担保融資)の話をしたところ、「ユヌス総裁の取組み(バングラデッシュで最も貧しい女性に無担保で融資するマイクロクレジットシステム)とそっくりだ」といたく気に入られた。上甲さんは毎年のようにバングラデッシュのグラミン銀行を訪ねておられるとのことで、今年のゴールデンウィークには一緒に行けそうなので今から楽しみである。
わが社の「しあわせ市民バンク」の取組みはスタートしてからまだ3年だが、すでに10件3,700万円の融資実績があり、もちろん延滞や焦付は1件も発生していない。
4、 企業内託児所の創設
わが国では民間企業が企業内に託児所を設けるといった発想があまりない。ちょうど1年前、地銀としては初めて、金融界全体でも新生銀行に次いで2番目の早さでこの託児所を創設した。
こうした取組みは海外に比べると著しく遅れているが、多くの企業が目先のコストに目を奪われ、女性に働きやすい職場環境を提供することにより、それまでに蓄積されたスキルやノウハウを生かすといった考えが浸透していないためのように思われる。経営者のなかには、そういうことこそお役所の仕事といった考えも今なお少なくない。
長期的にみれば、スタート時の設備投資コストや人件費等運営費は、公的補助を組み込むとさしたる負担ではなく、むしろ広告宣伝費や優秀な人材確保といった効果も考えると、十分に採算のはじけるものである。
以上、女性活用に関しいくつかの視点から平素感じていることや、現在取組んでいることを思いつくままにご紹介させていただいた。
結論的にいえば、このテーマに取組み始めてから企業イメージが向上したばかりか、業績そのものも連動して上向きになってきており、これまでやったことが間違っていなかったとの思いがしている。
2005年4月
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